このページは「測温抵抗体」について
測温抵抗体とは何か、その役割、原理等を
説明しています。
現代社会は多くの電子機器で溢れています。
その中には、オーブンやエアコン、車のエンジンなど、
温度の制御が重要となる機器が多数存在します。
これらの機器で任意の温度に制御できる秘密の一つが、
「測温抵抗体」の存在です。
電子機器に限らず、製造現場においても
ヒーターや熱蒸気などを使って製品を任意の温度で
温めることはあります。
そういった場面でも測温抵抗体は
使われています。
1.測温抵抗体とは

測温抵抗体の一例:オムロンHPより
「測温抵抗体」とは、
名前の通り温度を測るための抵抗体です。
RTDと呼ばれることもあります。
Resistance Temperature Detectorの
略です。
測温抵抗体に使われる
金属や金属酸化物は使われます。
それらは温度が変化すると
電気抵抗値も変わる性質を持っています。
この性質を利用して温度を測定するための
センサ(検出器)として使われます。
抵抗値の変化から
温度を測定するわけです。
2.測温抵抗体の原理
「測温抵抗体」はその名前通り、
温度測定ための抵抗体です。
これがどのように動作するのか、
電気初心者向けに説明します。
2-1.抵抗とは何か
まず、基本的な電気の概念から始めましょう。
電気が流れる電路には、流れに対して
いくつかの障害(抵抗)があります。
これは、道路における交通渋滞で例えてみます。
交通渋滞は
車がスムーズに進むことを阻止します。
交通渋滞があると、車は遅くなります。
同様に、電気にも抵抗があると、
その流れは遅くなり流れが悪くなります。
2-2.測温抵抗体の原理
温度測定抵抗体の基本的な原理は、
金属の電気抵抗が温度に
依存するという性質に基づいています。
これは、道路が熱い日にアスファルトが
軟化して車の進行を遅くするようなものです。
同様に、金属は温度が上昇すると、
「電子」と呼ばれる粒子が動きが悪くなり、
その結果として
電流の流れに対する抵抗が増えます。
この性質を利用すると、
金属の抵抗を測定することで
その温度を知ることができます。
電流を抵抗体に流し、どれくらいの抵抗があるか
を測定すると、抵抗体の温度を
知ることができるのです。
3.測温抵抗体の利用と使用例
測定抵抗体は、その抵抗値の変化を
温度の変化として定めることができる部品です。
この原理により、完成した商品だと
エアコンやオーブンなどに
製造工場だとヒーターや熱蒸気などで
商品を任意の温度で加工する工程など
でも使われます。
食品加工の一工程として80℃の恒温槽で
食品を2時間温める工程とかは
よくありそうでしょ?
他にも色々な業界で使われます、
製薬業では生産プロセスで
必要な厳密な温度制御を行うため、
自動車産業ではエンジンや排気の温度を
監視するために使用されています。
4.温度調節器とは
これほど多岐にわたり使用される
測温抵抗体ですが、測温抵抗体は
温度検出のセンサーですので
単体では使えません。
測温抵抗体は温度調節器という
装置・電子機器と一緒に使われるのが
一般的です。
温度調節器は温調器とも
呼ばれます。

温度調節器の一例:MONOTAROのHPより
温調器は多種ありますが
上写真は製造工場の生産過程で
使われることが多い
オムロンの温調器です。
温調器の役割は
保ちたい温度に制御することです。
測温抵抗体で温度を検出し
その温度を温調器へフィードバックします。
温調器で設定した温度より低い場合は
ヒーターなど温める負荷をONして
設定温度になるように制御します。
高かったり、設定温度になると
OFFにして冷まします。
制御方式にはON/OFF制御や
PID制御などがあります。
温調器や制御方式について
解説するとそれだけで1ページに
なりますので、このページでは
これぐらいにしておきます。
ここで知ってほしかったのは
測温抵抗体だけで温度を制御する
わけではないことです。
5.測温抵抗体の種類
測温抵抗体はその素材により
いくつかの種類に分けられます。
最も一般的なのは白金測温抵抗体(プラチナ)で
その抵抗値の温度に対する変化が
正確で線形であるため、
広範な温度範囲で使われます。
他にはニッケルや銅の素材も
用いられます。
ここでは最も一般的で
私もよく使う白金測温抵抗体について
説明します。
5-1.Pt100
Pt100は、0℃の時に
抵抗値が100Ωの白金測温抵抗体です。
Pt100は白金測温抵抗体の中で最も
使われ、さまざまな産業で広く利用されています。
5-2.Pt1000
Pt1000は、0℃の時に
抵抗値が1000Ωの白金測温抵抗体です。
(100°Cにおける抵抗値)/(0°Cにおける抵抗値)を
抵抗比率というのですが
Pt100とPt1000は等しく、
抵抗値は10倍なので
より高精度の測定が可能となります。
しかし、その分、
コストが高くなるという
デメリットもあります。
他にもPt10やPt500もあります。
5-3.JPt100
JPt100は1987年以前は
Pt100という名称でした。
JIS規格の改訂により
Pt100の規格変更に伴い区別のため
1987年以前のPt100をJPt100に
名称を変更しました。
ただ、このJPt100は
1997年のJIS改定時に廃止されました。
廃止されたJPt100ですが
それ以前に設置された装置等で
使われていることがよくあるので
紹介しました。
温調器によっては
Pt100かJPt100かを入力して
設定しなければいけないものも
あります。
Pt100とJPt100の測温抵抗体は
抵抗比率が違うので
間違えると温度がずれるからです。
私は1987年以前の測温抵抗体に対して
温調器の設定をPt100にしたため
設定した温度よりもずれた使い方を
した失敗談もあります。
5-4.ClassA、ClassB
ClassAとClassBは、
測温抵抗体の精度等級を表す指標です。
これらは、測温抵抗体が
どれだけ正確に温度を測定できるかを示します。
ClassAはClassBよりも精度が高いですが、
その分、コストも高くなります。
6.測温抵抗体の選定
測温抵抗体を選定する際には、
以下の点を考慮すると良いでしょう。
6-1.用途
温度測定が必要な状況や目的により、
適切な測温抵抗体を選ぶ必要があります。
例えば、広範囲の温度を測定する必要がある場合や
耐久性が求められる場合は、PT100が適しています。
6-2.精度
測度の精度要求は
測温抵抗体の選択に大きな影響を与えます。
温度の微妙な変化を捉える必要がある場合、
PT1000やClassAが適しています。
一方、広範囲の温度変化を
一般的な精度で捉えるだけで良い場合は、
Pt100やClassBが適しています。
(私も通常Pt100 ClassBを使っています)
6-3.コスト
測温抵抗体の種類によっては、
コストが高くなるものもあります。
例えば、高精度な測定が可能なPT1000や
ClassAは一般的に高価です。
予算内で最適なパフォーマンスを得るために、
コストと性能のバランスを考慮することが重要です。
6-4.耐環境性
測温抵抗体は
さまざまな環境下で使用されます。
例えば、化学的な腐食が激しい場所や
高温・高湿度の場所での使用を
想定している場合は、
それに耐えられる抵抗体を
選択する必要があります。
また、振動や衝撃が予想される環境では、
物理的に強固な抵抗体を
選ぶことが望ましいです。
メーカーによっては
一般形、防水形、耐腐食形、耐圧防爆形など
色々と取り揃えています。
以上の要素を総合的に考慮して、
最適な測温抵抗体を選定します。
7. 故障が起きたときの調査法
ここまで測温抵抗体や温調器の
役割と重要性について解説しましたが、
これらが故障した時の
基本的な調査法を解説します。
7-1.測温抵抗体の抵抗値の測定
測温抵抗体が故障している場合、
その抵抗値が変わらない、
あるいは非常に高い、
または非常に低い場合があります。
そのため、まずは測温抵抗体の
抵抗値を測定してみます。
7-2.配線のチェック
配線が断線していたり、
ショートしていたりすると、
抵抗値に変化が出ます。
7-3.温調器の動作確認
温度制御は測温抵抗体だけで
行うものではありません。
設定した温度にならない場合は
温調器の動作も疑います。
例えば、
ヒーターで温める装置の場合
温度は他の温度計を使い
正確なことが確認できている状況で
その温度が設定値より低いのに、
ヒーターの電源を入にするための
電磁接触器等がONしていない場合は
温調器から電気信号(電圧)が
出力していない
可能性もあります。
(*電磁接触器については以下を参考ください↓
→電磁接触器とは、電磁開閉器とは)
上記の例のように、
ONしているかどうかだけで
はっきりと状態の違いが
分かる異常だけではなく
今までと動作の違いが分からないが
温度が設定値にならない、
何か動きがおかしい
といったはっきりわからない
異常状態もあります。
温調器は電子部品で作られているので
長期間の使用で部品が劣化して
特性が変わることもあります。
このように
はっきりしない場合は
新品に交換するようにしています。
8. 最後に:温度制御の重要性について
最後に測温抵抗体の説明とは
それますが、温度制御の重要性に
ついて書いておきます。
温度制御は、我々の生活のあらゆる面で
重要な役割を行っています。
具体的にその重要性を見ていきましょう。
8-1.家庭での役割
家庭での一例として、
料理は温度制御が必須です。
例えば、オーブンで料理をする際、
高すぎる温度では食品が焦げてしまい、
低すぎると十分に調理されません。
また、冷蔵庫では食品を
適切な温度で保存することが必要で、
温度が高すぎると食品が腐ってしまいます。
エアコンや暖房装置もまた、
快適な生活環境を提供するために
必要な温度制御を行います。
8-2.産業での役割
産業においても
温度制御の重要性は限りなく高いです。
例えば、製鉄業では、
高温の鉄を制御するために
緻密な温度制御が求められます。
半導体製造においても、
チップ製造プロセスの各段階で
正しい温度制御が行われなければ
製品の品質に重大な影響を及ぼします。
8-3.医療での役割
医療分野でも温度制御は重要です。
人体への直接影響を考慮した医療機器や、
生物学的な材料を扱う実験装置は、
正しい温度制御が必要です。
重症患者のケア、あるいは臓器移植の際の
臓器保存など、精密な温度制御が
必要となる場面は多岐にわたります。
8-4.最後に
これらの例からわかるように、
温度制御は私たちの生活の質を
維持し向上させ、産業活動を支えるために
重要な役割を果たしています。
そのためにも、
まずは今の温度が分からないと
始まりません。
温度を測定するセンサーである
測温抵抗体の重要であるといえます。
このページで測温抵抗体とは何か
基本的なことや重要性が理解できたなら
良かったです。
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