旋盤の主軸が途中で弱くなって停止する故障を確認|原因はスターデルタタイマーの接点不良

使用中に、正面盤旋盤の主軸回転が途中で弱くなり、そのまま停止することがあるという故障相談がありました。
ただし、この症状は常時起こるわけではなく、ごく稀に発生するとのことでした。

このような断続故障は、現場に行った時点で正常に動いてしまうことも多く、原因の特定が難しいケースです。
今回も最初の時点では故障状態が再現せず、可能性だけを挙げても範囲が広すぎる状態でした。

制御盤を確認するとスターデルタ始動だった

制御盤を開いて確認すると、主軸モーターはスターデルタ始動になっていました。
使用されている三相誘導電動機は18.5kWと大きく、このクラスであれば、古い設備では直入れではなくスターデルタ始動としている例が多くあります。
また、この旋盤は古い設備のため、インバータやサーボで駆動している構成ではありませんでした。


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スターデルタ始動では、始動時はスター結線で立ち上げ、その後デルタ結線へ切り替えて通常運転に入ります。
スター結線中はデルタ結線時よりも電圧が低くなるため、トルク(回転する力)も小さくなります。
そのため、もしスターからデルタに正常に切り替わらなければ、回転力が不足し、負荷によっては弱くなったり停止したりすることがあります。

再現しない故障は、原因候補が多すぎて絞りにくい

この時点で考えられる原因はいくつもありました。
たとえば、自己保持回路の解除、電線の断線しかかり、タイマー不良、スター用・デルタ用接触器のインターロック接点不良、電磁接触器本体の不具合などです。


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ただ、症状が再現しない状態で手当たり次第に部品を交換していくのは、時間も費用もかかるうえ、原因を外す可能性があります。
そこで今回は、いったん設備を使ってもらい、もし再現したら電源を切らず、何も触らず、そのままの状態で保管しておいてほしいと依頼しました。

再現した状態で確認すると、デルタ側接触器が動いていなかった

すると、その日のうちに症状が再現したとの連絡があり、現地へ向かいました。
確認すると、三相モーター駆動用の電磁接触器はすべて停止しており、デルタ用電磁接触器のコイルには使用電圧が来ていませんでした。

デルタ用接触器の前段をたどると、スターデルタ用タイマーの接点を通る回路になっています。
そこでタイマーを確認すると、タイマー自体は電源ランプが点灯しており、動作している状態でした。

しかし、それにもかかわらず、デルタ用接触器コイル側には電圧が出ていません。
タイマー接点をさらに確認すると、a接点の片側には電圧が来ているのに、出側には電圧が出ていない状態でした。

故障原因はスターデルタタイマーのa接点不良

つまり、タイマー本体は動作しているが、a接点が導通していないということです。
今回の故障原因は、このスターデルタタイマーのa接点不良でした。

接点の摩耗か、あるいは内部機構の劣化によって、動作中に接触しなくなり、デルタ用電磁接触器へ動作電圧が供給されなくなっていたと考えられます。
その結果、主軸回転が弱くなり、最終的には停止していたわけです。

古いスターデルタタイマーは交換時に注意が必要

確認すると、故障していたのはかなり古いスターデルタ用タイマーでした。
当然ながら、すでに生産中止となっている機種だったため、現行品へ交換する対応を行いました。

スターデルタ用タイマーは、スターからデルタへ切り替わる際に、両方の接触器が同時に入らないようOFF時間を設ける役割を持っています。
この切替タイミングを1台で作れるのが、スターデルタタイマーの特徴です。

故障していた旧型機種では、この切替時間が内部で固定されていました。
一方、現在の機種ではダイヤル設定により時間を調整できるものが多く、今回は元の動作にできるだけ近い時間に設定しました。

旧型と現行品では接点の考え方が異なることがある

もう一つ注意が必要なのが、旧型タイマーと現行タイマーで、接点動作の考え方が異なる場合があることです。
古いスターデルタタイマーでは、電源を入れていない状態でも内部のb接点が導通しているものがあります。

それに対して、交換した現行機種では、電源投入後の動作条件が旧型と異なるタイプもあります。
そのため、古いタイマーで無通電時のb接点状態を前提にした回路を組んでいる場合は、単純に現行品へ置き換えるだけでは使えず、回路変更が必要になることがあります。

以前にも、同様の理由で電磁リレーを増設するなど、回路に少し手を加えて対応したことがあります。
今回はその接点を使う構成ではなかったため、そのまま交換で問題ありませんでした。

古い設備ではスターデルタ回路の故障は今でもある

現在の工作機械では、NC化やインバータ化が進み、大きなモーターもサーボやインバータで駆動する設備が主流です。
しかし、古い設備ではスターデルタ始動のまま使われているものも、今でも産業現場には少なくありません。

スターデルタ回路はシンプルに見えて、タイマー、接触器、補助接点、インターロックなど複数の要素で成り立っています。
そのため、今回のようにタイマー本体ではなく接点不良が原因になることもあります。

今回の故障事例から分かること

今回の故障は、「主軸回転が弱くなって停止する」という症状だけを見ると、モーター本体や負荷異常も疑いたくなる内容でした。
しかし、再現した状態をそのまま残してもらったことで、デルタ側接触器へ電圧が来ていないことを確認でき、最終的にスターデルタタイマーのa接点不良へたどり着くことができました。

断続故障では、正常時に点検しても原因が見えにくいことが多いです。
そのため、再現時に何も触らず保全してもらうという対応は、原因を絞るうえで非常に有効です。

また、旧型のスターデルタタイマーを現行品へ交換する場合は、タイミング設定だけでなく、接点仕様の違いにも注意が必要です。
古い設備の保全では、単純な部品交換だけで済まないことがある、という一例だと思います。

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