天井クレーンの走行動作の
故障修理を行いました。
1.故障内容
故障内容は
天井クレーンを走行させると
異常な音が出るというもので
調査を依頼されました。
2.やったこと
まずは、
走行動作をさせてみました。
確かに動き始めに
カタカタという音がしますが
問題視するほどの音ではありません。
運転士に確認すると
この音ではないとのことで
異常な音はしたりしなかったり
するということです。
重い荷を吊ってしばらく動作させていくと
大きな異常音がやっと発生しました。
(モーターの異常音については
以下のページを参考ください。
⇒モーターから異常音、まず疑うポイント)
運転士もこの音だといっています。
異常音がした方のサドル部へ行き
走行車輪まわり、走行車輪の歯車と
走行の減速電動機(ギヤードモーター)の
歯車を見ましたが問題ありません。
以前、天井クレーンの走行の
減速電動機(ギヤードモーター)の軸が
折れていたという故障を経験したことが
あったので
今回もそれかもしれないので
そこを調査することにしました。
いきなり天井クレーンのサドルから、
電動機(モーター)を外し分解して
確認したのでは間違っていた場合
大変な時間ロスを発生させることになります。
ですので、問題がない方の
減速電動機(ギヤードモーター)のモーター線を
外し動作できなくさせ、疑いがある方だけで
走行動作をさせることにします。
さすがに軸が折れていると
天井クレーンの走行動作は
しないはずですから。
実際やってみると機械音はしますが
クレーンは走行動作はしません。
電流値を測定すると、だいたい無負荷時に流れる
電流は流れているが、クレーンは動作していません。
やはり電気ではなく軸が折れるなどの機械故障で
減速電動機(ギヤードモーター)の中で
空回りしていると考えられます。
持ち帰って分解すると、
下写真のように軸は折れていませんでした。
![](https://elec-tech.info/wp-content/uploads/2020/08/image1-3-300x225.jpeg)
下写真が減速部分ですが、歯車を手で回すと空回りします。
減速部分が故障原因です。
![](https://elec-tech.info/wp-content/uploads/2020/08/image2-2-300x225.jpeg)
減速部分を分解すると
歯車の歯が摩耗しています。
歯同士ががっちりとかみ合わず、
ここで空回りしていたのです。
新品の歯車に交換することで修理しました。
その際、メンテナンスとして
ベアリングも交換しました。
(ベアリングについては
以下のページを参考ください。
⇒ベアリングの故障について)
下写真が摩耗した歯車と新品歯車のです。
明らかに歯が違いますね。(右写真が摩耗した方です)
(上写真は内輪の歯です)
簡易的な説明になりますが、この2つが
下の写真のように組まれます。
そして、外輪の歯車は電動機(モーター)の
歯車とかみ合い回転させられます。
![](https://elec-tech.info/wp-content/uploads/2020/08/image1-4-e1598481445788-225x300.jpeg)
現地で修理した減速電動機(ギヤードモーター)を
サドルに組んで運転すると、
今度はカタカタという音はせず
力強い音をたてて動作しました。
3.最後に
天井クレーンの異常は
今回のように
重い荷を吊って動作させないと
再現しないことはあります。
吊り上げ荷重が3.0t以上のクレーンを
対象に2年に1回行われる性能検査では
吊り上げ荷重を吊って動作させる
荷重検査があります。
その検査で異常が発生(発見)
できたことも過去あります。
今回のような故障は
リレーシーケンスと三相モーターとはの
知見があれば対処はできます。
そしてそれは、
それほど難しいものでもありません。
当方では、故障現場で役立つ
リレーシーケンスと三相モーターの教材を
扱っていますので興味があれば
以下をクリックして参考ください。
⇒3ステップでシーケンス制御の基礎力・実技力・故障対応力が身につく講座
こういった修理過程の段階的思考考察は大切ですよね。
きっとお客様への説明も丁寧で解りやすいのでしょうね。
同僚にも後輩にもしっかり伝えてください。
同僚にも後輩にもお客様にも優しい確実な修理技師が居るから
世の中は回っているんですね。
本当にありがとうございます。
日本がもっともっと技術者を大切にする国であります様に。