三菱電機の巻上微速付の5tホイスト
(S-5-HRVT)の故障修理をしました。
1.故障内容
故障内容は、通常速度の巻上・巻下時に
ペンダントの押ボタンを離しても
すぐに巻上・巻下動作が止まらず
わずかに動いて止まるというものです。
(押ボタンについては
以下のページを参考ください。
⇒押ボタンとは)
2.やったこと
実際動作させて確認すると
確かに押ボタンを離して動作を
停止させても0.5秒ぐらい動作が
止まりません。
これは危険です。
たった0.5秒ですが、
クレーンを使って
工作機械に加工物を設置する際、
わずかでも動いてしまうとうまくできず、
機械や加工物に傷をいれてしまいます。
推定原因として、
最も疑わしいのはブレーキ関係です。
ブレーキの制動力が下がっているので
すぐに停止しないのです。
三菱電機のホイストは、
巻上ブレーキ板(ライニング)がちびて
ある限界点まできたらブレーキ調整しないと、
機構的原因でブレーキの制動力が落ちてしまいます。
(自動調整機能もあるのですが
使いにくいので外してあることが多いです)
まずは、そこを確認しましたが
問題ありません。
次は巻上ブレーキ板が摩耗、もしくは
質が変化して制動力が弱くなったことが
考えられます。
これは交換してみるしか確認方法が
ないので交換しました。
交換時に新品のブレーキ板と
ライニングの厚さを比較してみましたが
あまり変わりません。
つまり質が変化したことが原因かも
しれませんが、交換して試運転したところ
まったく状況は変わっていません。
微速用のブレーキも交換
今交換したのは、巻上下のブレーキ板です。
微速付ホイストでは微速用の巻上下の
モーターにもブレーキ板が付いています。
微速部に付いていますが
微速動作だけではなく
通常の巻上下のブレーキ制動力にも
効いています。
今度は、微速用電動機(モーター)部の
ブレーキ部分を分解してみると、
すごいチリです。
これはブレーキ板の樹脂が摩擦で
摩耗した時にでるチリです。
積もるぐらいの量だったので、これだけで
ブレーキ板の摩耗具合はわかるのですが
現品をみると、樹脂は全て摩擦でなくなり
樹脂を貼り付けた金属板しかありません。
つまり、ブレーキが効くときの摩擦力は
ほとんどないに等しい状態だったのです
ホイストがある高所にエアー(コンプレッサー)
をあげて、チリをエアーで飛ばして
掃除しました。
チリがあまりに多いので、15分ぐらい
エアーでふかしても まだ カスが飛んで
いました。
これだけ、神経質に
チリ・埃を飛ばすには理由があります。
微速用電動機(モーター)の電磁ブレーキは
直流電源で動作させるブレーキです。
直流は交流に比べて吸引力がないので
カスがあれば、それが邪魔して
ブレーキは解放せずブレーキが効いたまま
動作させてしまう懸念があります。
それをすると、ブレーキ板の摩耗が
早くなることもありますが、
最悪 電動機(モーター)のコイルを焼損
させてしまうのです。
(コイルの焼損については
以下のページを参考ください。
⇒固定子コイルの故障)
微速は少ししか動作しないので、
動作しているかどうかわかりずらいこともあり、
実際にこれで電動機(モーター)のコイルを焼損させた例もあります。
金属板だけとなったブレーキ板が
ブレーキ箱や圧力板と摩擦していたので
相手側が傷ついてないか確認しましたが
問題ないようです。
ブレーキ板を新品に交換して、組み立てて
完了です。
(三菱の直流では組み立て方も一工夫必要です、
たまに失敗して、やり直すことがあります。。。)
運転させると、今度は
押ボタンを離した瞬間止まります。
さすがに まったく樹脂がない状態だと
止まりませんよね。。。。
この写真は
微速のブレーキ板の比較です
交換前のブレーキ板はまったく
樹脂部分がありません。
3.所感
微速付のホイストは
私が扱ったメーカーでは
巻上・巻下ブレーキの制動力には
微速部のブレーキも関係あります。
ブレーキが効きにくいと
通常速の方をメンテナンスしがちなので
今回のように、微速部のブレーキ板が
極端に悪いという状態が起こるのだと
思います。
しかし、本当に チリが
すごかったです。
コンプレッサーのエアーで吹かすと
周囲が真っ黒になりました。
故障修理で
三菱の巻上巻下の直流ブレーキの
分解時はエアで掃除をするように
しています。
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