キュービクルで見かける「単相トランス2台のV結線」:三相トランスが無い理由と注意点

昔に設置されたキュービクルの中には、
三相用トランス(3相トランス)が
入っていないものがあります。

三相で受電しているにも関わらず、
キュービクルを開けて中を見ると、
単相トランスが2台だけ設置されている

――そんなケースです。

私は仕事上、キュービクルの中を
見る機会があると、今でもたまに見かけます。

※キュービクルは高圧設備です。
知識・資格のない方が開けるのは危険です(感電・アーク事故)。
高圧についてはこちらでも触れています:

高電圧と低電圧とは

この記事でわかること

  • キュービクルに三相トランスが無くても、三相が使える理由(単相2台のV結線)
  • V結線(開放Δ)の容量が「2台合計にならない」理由(0.866倍の考え方)
  • 三相トランスと比べたときの、V結線のデメリット(負荷不平衡・偏り)
  • 昔、単相2台V結線が採用された背景として考えられる点(契約料金の考え方)
  • 現在の「デマンド(最大需要電力)」中心の考え方と、V結線が減った理由

結論:単相トランス2台でも「V結線(開放Δ)」なら三相に変圧できる

三相トランスが無いのに
三相が使える理由はシンプルで、
単相トランス2台をV結線(V-V結線/開放Δ結線)で
使っているからです。

単相トランス2台をV結線すると、
三相の変圧そのものは可能です。

ただし、三相トランス(3台構成)と比べると、
いくつか注意点があります。

V結線は「2台ぶん=そのままの容量」にはならない(0.866倍)

ここが大事なポイントです。
たとえば、50kVAの単相トランスが2
台あったとしても、V結線のバンク容量は
100kVAにはなりません。

V結線の容量は、概ね2台合計の
0.866倍(√3/2 ≒ 0.866)になります。

単相トランス台数V結線バンク容量(目安)
50kVA2台約86.6kVA(= 50×2×0.866)

つまり、同じ「単相2台」でも、
三相トランス1台のように
スパッと容量を確保できる方式ではありません。

三相トランスと比べたV結線のデメリット:負荷バランスが崩れやすい

V結線は「三相が作れる」一方で、
三相トランスと比べると不利な条件が出やすいです。

1) 負荷の取り方で、2台の負担が偏りやすい

V結線は、三相負荷がきれいに
バランスしているほど安定します。

逆に現場では、単相負荷が混ざったり、
負荷の偏りが出たりしがちです。

その結果、2台のどちらかに
負担が寄ることがあります。

2) 片側が先に苦しくなり、故障リスクが上がる

片側が過負荷気味になれば、
温度上昇→絶縁劣化→故障…と
つながりやすくなります。

三相トランスなら耐えていた使い方でも、
V結線だと苦しくなることがある、
というのは現場で起きやすい話です。

なぜ昔は、わざわざ単相2台V結線を使ったのか?(契約料金の歴史)

では、なぜ三相トランスではなく、
あえて単相トランス2台のV結線が使われたのでしょうか。

ここには、契約料金(基本料金)の考え方が
関係していた時代背景があります。

昔は、契約電力の決まり方が現在と違い、
受電設備(変圧器など)の容量を
ベースに見られやすい契約・運用がありました
(※地域・年代・契約メニューで差があり得ます)。

この考え方だと、設備容量を
小さく見せられる可能性があるV結線は、
三相トランス1台より
“有利に見える”場面が出ます。

実際、先ほどの例のとおり、
50kVA×2台でもV結線だと約86.6kVA相当です。

もし「三相トランス100kVA」を
入れた扱いになれば基本料金が
上がる…という前提なら、

少しでも容量を下げたいという
判断は理解できます。

契約の基本料金は、
電気を使う・使わないに関係なくかかります。

だからこそ、固定費を
下げたいという動機が強く働きます。

いま主流の考え方:デマンド(最大需要電力)

現在は、契約電力が
デマンド(最大需要電力)を軸に
決まる考え方が広く使われています。

デマンドは、ざっくり言うと
「一定時間(一般に30分)ごとの平均使用電力(kW)のうち、
その月で一番大きい値」です。

これが基本料金に効きます。

そして多くの運用では、
「当月だけでなく、一定期間の最大値」が
基準になっているケースもあります
(契約メニューにより異なります)。

この考え方になると、設備容量を
小さく見せる工夫よりも、
ピーク(最大需要電力)を
どう抑えるかが重要になります。

つまり、V結線で容量が
少し下がっても、
ピークを叩けば基本料金が
上がり得るわけです。

その結果、

  • トランスを2台入れる(スペース・コストが増える)
  • 負荷偏りなどのデメリットがある

というV結線を常用で
選ぶ理由は薄くなり、
三相トランスを素直に入れる方向に
寄っていった、と考えるのが自然です。

電力についてあいまいな場合は、こちらもどうぞ:
有効電力・無効電力・皮相電力(kW/kvar/kVA)

(補足)固定費は「契約」だけでなく「保安体制」も効く

高圧受電では、
契約に関わる固定費だけでなく、
保安体制(点検や管理)も
コストになりやすいです。

電気は「使わなくてもかかるコスト」が
意外と大きいので、昔の現場で
“なんとか節約したい”という工夫が
出てきたのは理解できます。

まとめ

  • 古いキュービクルでは、三相トランスがなく単相トランス2台のV結線で三相を作っている例がある
  • V結線は三相に変圧できるが、容量は2台合計の0.866倍になり、負荷の偏りが出やすい
  • 昔は契約の考え方や固定費の事情でV結線が選ばれた背景があり得る
  • いまはデマンド(最大需要電力)中心の考え方が広く、V結線で“設備容量を小さく見せる”意味は薄くなりやすい


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