クレーンやホイストは、現場で日常的に使う設備ですが、名称や構成の違いが混同されやすい分野です。
本記事では、当社が実務で多く扱う天井クレーンを中心に、クレーンとホイストの違い、巻上・横行・走行の構成、点検・資格・改造時の注意点まで全体像を整理します。
故障の切り分け手順や個別トラブル事例は別記事で詳しく解説しているため、必要なテーマは本文中のリンクから確認してください。
クレーンとは
クレーンとは、荷を「つる」「移動する」「所定の位置に下ろす」ための機械設備です。
人力では扱えない重量物を、安全かつ効率よく運ぶために使われます。製造業・鉄工所・倉庫・造船など、重量物を扱う現場では欠かせない存在です。
クレーンの基本動作は、現場では次の3つで整理されることが多いです。
- 巻上(まきあげ):荷を上げる/下げる
- 横行(おうこう):つり荷を左右に移動させる(トロリ移動)
- 走行(そうこう):クレーン本体をレール上で移動させる
この3動作を組み合わせることで、重量物を任意の位置へ搬送できます。
一方で、どの動作を持つかはクレーンの種類や構成によって異なります。
クレーンには複数の種類があり、代表的には次のように分類されます。
- 天井クレーン:建屋上部のランウェイ上を走行するタイプ
- 橋形(門形)クレーン:地上レール上を門形フレームで走行するタイプ
- ジブクレーン:支柱や壁に取り付けた腕(ジブ)の旋回で搬送するタイプ
- ホイスト式クレーン:ホイスト(巻上装置)を使う構成
ただし実際の現場では、名称が混在したり、設備仕様によって呼び方が異なることもあります。
そのため、名称だけで判断するのではなく、「どの動作を、どの装置が担当しているか」で把握することが重要です。
また、クレーンは単なる“持ち上げ機”ではなく、
- 電気(電源・制御・保護)
- 機械(減速機・ブレーキ・車輪・レール)
- 運用(点検・資格・安全手順)
が一体で成り立つ設備です。
つまり「クレーンとは何か」を正しく理解する第一歩は、機種名を覚えること以上に、動作の仕組みと構成要素を全体でつかむことにあります。
ホイストとは
ホイストとは、荷をつり上げて上げ下げするための巻上装置です。
クレーン全体を指す言葉ではなく、クレーンを構成する主要な装置のひとつとして使われます。
現場では「ホイスト」と呼んでいても、実際には天井クレーンの一部を指している場合があります。
ホイストの役割は、主に次の2つです。
- 巻上(荷を上げる/下げる)
- 横行(トロリと一体で左右に移動する)
一方で、クレーン本体の走行はサドル側の走行装置が担当する構成が一般的です。
そのため実務では、「巻上・横行はホイスト側、走行はサドル側」と分けて考えると、点検や不具合切り分けがしやすくなります。
ホイストには、ワイヤロープ式や電気チェーン式などの方式があり、定格荷重・揚程・速度・使用頻度によって選定が変わります。
方式によって保守ポイントも異なるため、型式や仕様を確認したうえで、点検項目と交換基準をそろえて運用することが大切です。
このあとでは、当社が主に扱う天井クレーン(ホイストクレーン)を前提に、対象範囲と構成を整理します。
本記事の対象範囲
クレーンには複数の形式がありますが、本記事で主に扱うのは天井クレーン(ホイストクレーン)です。
橋形クレーンやジブクレーンなど他形式については概要にとどめ、実務で混同しやすいポイントを中心に整理します。
本記事の前提とする基本動作は、次の3つです。
- 巻上:荷を上げる/下げる
- 横行:つり荷を左右方向に移動する
- 走行:クレーン本体をレール上で移動する
構成の見方としては、巻上・横行はホイスト側、走行はサドル側という役割分担を基本にします。
この分け方を先にそろえておくと、点検時の確認箇所や不具合発生時の切り分けがぶれにくくなります。
なお、設備の仕様、呼称、制御方式は現場ごとに異なる場合があります。
そのため名称だけで判断せず、実機の構成(どの装置がどの動作を担当しているか)を確認しながら読むことをおすすめします。
天井クレーン(ホイストクレーン)の構成要素
天井クレーン(ホイストクレーン)を実務で理解するうえでは、装置を「どの動作を担当するか」で分けて把握するのが基本です。
ここでは、現場で確認頻度の高い構成要素を全体像として整理します。
巻上装置(ホイスト本体)
巻上装置は、荷を上げ下げする中核です。
一般に巻上モーター、減速機、ドラムまたはチェーン機構、ワイヤロープ(またはチェーン)、フックブロックなどで構成されます。
巻上不良の確認では、電気系だけでなく、機械抵抗や摩耗状態もあわせて見ることが重要です。
横行装置(トロリ移動)
横行装置は、ホイストを桁上で左右に移動させるための機構です。
横行モーター、車輪、レール接触部、駆動伝達部などが関係し、給電方式や配線取り回しも不具合に影響します。
「巻上は正常だが横行だけ不安定」といった症状は、この系統を重点的に確認します。
走行装置(サドル側)
走行装置は、クレーン本体を建屋レール上で移動させる機構です。
走行モーターはサドル側に配置される構成が一般的で、車輪・レール状態・アライメント・給電状態が動作安定性に直結します。
走行のみ不調な場合は、ホイスト側ではなくサドル側から確認するのが基本です。
ブレーキ系
ブレーキは停止保持と安全確保に直結する重要部です。
巻上側・走行側それぞれで構成が異なり、開放不良、制動力低下、ギャップ不良などが断続停止や異常挙動の原因になります。
点検時は電気的な開放信号だけでなく、機械的な作動状態まで確認する必要があります。
操作・制御・保護回路
操作回路には押釦、接触器、補助接点、インターロックなどが含まれ、保護系にはサーマルや各種保護機器が関与します。
不具合対応では「主回路」「操作回路」「保護回路」を分けて確認すると、原因の切り分けが早くなります。
また、接点劣化や端子ゆるみなど、基本的な要因が断続不良の主因になることも少なくありません。
このように、天井クレーンは電気・機械・運用が一体となって機能する設備です。
次のセクションでは、目的別に必要な情報へ進めるよう、テーマごとの入口を整理します。
実務でよく見るテーマ別ガイド
ここからは、現場で問い合わせや確認が多いテーマごとに、読むべきページの入口を整理します。
「今どの情報が必要か」に合わせて、該当する項目から進んでください。
故障・異常停止を調べたい
「まったく動かない」「巻上だけ不調」「走行だけ不安定」「たまに止まる」など、症状別の切り分けを確認するための入口です。
点検の初手、よくある原因、実例ベースの確認順をまとめたページへ進みます。
→ 故障・異常停止の解説ページを見る(準備中です)
点検・検査の進め方を確認したい
日常点検、定期自主検査、記録の残し方など、運用で外せない点検実務を整理したページへの入口です。
点検項目の抜け漏れ防止や、現場での実施順の確認に使えます。
→ 点検・検査の解説ページを見る(準備中です)
資格の要件を確認したい
クレーン運転、玉掛けなど、作業内容や条件によって必要となる資格を確認するための入口です。
設備条件ごとに確認すべきポイントを整理したページへ進みます。
→ 資格要件の解説ページを見る(準備中です)
改造・更新時の注意点を知りたい
機械的改造、制御改修、機器更新時に確認すべき実務上の注意点を整理したページへの入口です。
施工前確認、変更後確認、記録の残し方などをまとめた解説へ進みます。
→ 改造・更新時の解説ページを見る(準備中です)
用語を整理したい
巻上・横行・走行、ホイスト、サドル、トロリなど、混同しやすい用語を整理するための入口です。
現場で使う言葉の意味をそろえたいときに活用できます。
→ 用語解説ページを見る(準備中です)
検査・試験・資格・改造時の注意点
天井クレーン(ホイストクレーン)は、故障対応だけでなく、日常運用の段階で検査・資格・改造時の確認をそろえておくことが重要です。
ここでは実務で外しにくい要点を、全体整理としてまとめます。
検査・試験は「実施」と「記録」をセットで管理する
現場運用では、作業前の確認、定期的な自主点検、必要な機能確認を継続して行うことが基本です。
また、実施した内容を記録として残し、異常の傾向や再発の有無を追える状態にしておくと、トラブル時の判断が早くなります。
点検項目は設備仕様に合わせて統一し、担当者が変わっても同じ基準で見られる運用にしておくことが大切です。
資格は「設備条件」と「作業内容」で確認する
クレーン関連の資格は、設備の条件や作業内容によって必要要件が変わります。
運転業務だけでなく、荷のつり作業に関わる資格要件も含めて、対象設備ごとに確認する運用が必要です。
「過去と同じやり方だから大丈夫」とせず、担当者・作業範囲・設備条件の3点をそろえて確認してください。
機械的改造・制御改修は施工前確認を必須にする
機械的改造や制御方式の変更は、安全機能や運用条件に影響するため、施工前の確認を必須にしてください。
改造内容によっては、確認手続きや検査、記録整備が必要になる場合があります。
実施前に、設備仕様・関係資料・確認先を整理し、施工後は動作確認と記録更新までを一連の作業として完了させることが重要です。
※資格要件、検査区分、改造時の手続きは、設備仕様・運用条件・法令改正で変わる場合があります。
実施前は必ず、最新の公式情報、メーカー資料、所轄機関への確認を行ってください。
よくある質問
クレーンとホイストは何が違いますか?
クレーンは「荷をつって運ぶ設備全体」を指し、ホイストはその中で荷を上げ下げする「巻上装置」を指します。
現場では「ホイスト」と呼んでいても、実際には天井クレーン全体の一部を示している場合があります。
巻上・横行・走行の違いは何ですか?
巻上は荷の上げ下げ、横行はつり荷の左右移動、走行はクレーン本体の移動です。
一般的なホイストクレーンでは、巻上・横行はホイスト側、走行はサドル側が担当します。
走行だけ不調なときは、どこから確認すればよいですか?
まずは走行系の担当範囲(サドル側)を優先して確認します。
走行モーター、走行用の操作・制御回路、給電状態、車輪・レール状態などを順に切り分けると原因を絞りやすくなります。
名称が設備図面と現場呼称で違うことがあります。どう整理すればよいですか?
名称だけで判断せず、「どの装置がどの動作を担当しているか」で整理すると混乱しにくくなります。
図面・型式・現場呼称を対応表にしておくと、点検や引き継ぎ時の認識ずれを防げます。
改造や制御変更をするときに注意することは?
改造・変更は安全機能や運用条件に影響するため、施工前に仕様確認と必要手続きの確認を行うことが重要です。
施工後は動作確認、記録更新、関係者への共有までをセットで実施してください。
まとめ
クレーンとホイストを正しく理解するうえで重要なのは、名称を覚えることよりも、どの装置がどの動作を担当しているかを整理することです。
天井クレーン(ホイストクレーン)では、巻上・横行・走行の役割分担を押さえることで、点検・運用・不具合対応の判断がぶれにくくなります。
本記事の要点は次の3つです。
- クレーンは設備全体、ホイストは巻上装置という関係で理解する
- 実務では「巻上・横行・走行」の担当装置で構成を把握する
- 検査・資格・改造時の確認は、実施と記録をセットで管理する
より詳しい実務情報は、目的に応じて次の解説ページから確認してください。
・故障・異常停止の切り分けを確認する
・点検・検査の進め方を確認する
・資格要件を確認する
・改造・更新時の注意点を確認する

















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