このページでは
磁気飽和について
解説しています。
磁気飽和は
飽和磁束密度とも
呼ばれます。
1.磁気飽和とは
磁気飽和とは
その名前のとおり
磁気が一杯になり
これ以上増えない状態のことです。
磁性体に磁束が留まる
磁性体とは磁場の中で
磁化される物質をいいます。
要は磁石があり
その傍(磁場)に置くと
吸着したりと
影響を受ける物質です。
電磁石で
説明していきます。
電磁石は鉄心などの磁性体に
コイルを巻いています。
(*コイルをソレノイドコイル
ともいいます。
ソレノイドについては
以下を参考ください。
ソレノイドとは)
この電磁石はコイルに
電圧を印可して
電流を流すと磁力を持ちます。
この時、目に見えませんが
何が起こっているかというと、
コイルで発生した磁束が
下絵のように磁性体も
通ります。
磁束が存在する空間が
磁界であり磁場です。
磁束については
以下のページを参考ください。
物資には磁束を
通しやすい/通しにくい
という性質があります。
この度合いを透磁率といい、
透磁率が大きいほど
磁束は通しにくいです。
(透磁率については
以下をクリックして参考ください。
→透磁率とは)
透磁率の高い物質の場合は
磁束が通り抜けず
中で留まるので
その分磁力を持ちます。
イメージしてください。
木のコイルを巻いて
通電すると、磁力を
持ちそうですか?
持たなそうですよね。
実際に
木の透磁率は低いです。
小学生の理科の実験で
電線を鉄棒に巻いて
乾電池を接続して
電磁石を作りました。
その時、乾電池の数を
多くした方が
釘や砂鉄などを
強く吸い付けました。
これはコイルに流す電流を
増加させることで
磁束の量を増加させたからです。
物質内の磁束の量を
示す値として
磁束密度があります。
そのまま、磁束の密度で
値が大きい方が
磁束が沢山あり
磁力は強くなります
(磁束密度については
以下をクリックして参考ください。
→磁束密度とは)
2.最大磁束密度と磁気飽和
ここまでの説明だと
磁力を強くするためには
透磁率の高い物質を使い
電流を増加させ
磁束を増やせばいいことに
なりますね。
下のグラフを見てください。
このグラフは磁化曲線とか
B-H曲線と呼ばれるものです
B=μH
のグラフで、
Bは磁束密度、μは透磁率
Hは磁界の強さを示します。
磁界の強さは磁束の多さ、
そしてコイルに流す電流が
増えれば増すと考えてください。
最初は上記式どおりの
透磁率μの傾きの曲線ですが
磁界が強くしていくと
あるところから
磁束密度の増加が
緩やかになっています。
磁束密度は
磁界を強くすれば
いくらでも上昇するのでは
なく、最大値があります。
それを最大磁束密度とか
飽和磁束密度といいます。
そして、この最大に
達した状態を
磁気飽和といいます。
磁力を強くするためには
最大磁束密度が
高い物質が必要だと
いうことですね。
3.磁気飽和したらどうなるのか
磁気飽和しても
尚電流を流し磁界を上げていくと
インダクタンスが低下し
コイルに大きな電流が流れます。
(この現象については
以下のサイトを参考ください。
→インダクタンスとは)
大電流が流れれば
コイルが焼損する恐れも
あります。
ですので、
鉄心にコイルを巻いた機器
トランスや三相誘導電動機
など
磁気飽和しないように
使う必要があります。
(三相誘導電動機については
以下のサイトを参考ください。
→三相誘導電動機(三相モーター)とは?)
4.磁気飽和の対策例
前項で三相誘導電動機も
磁気飽和に気を付けて
使う必要があると書きました。
三相誘導電動機は
回転速度を変えて使うため
インバータで制御することは
よくあります。
(インバータについては
以下のサイトを参考ください。
→インバータとは?概要の79%まで分かるよう15項目で解説)
モーターの回転速度を
下げるためにインバータで
電源周波数を下げると
磁束が増え、
最後磁気飽和してしまいます。
その対応策として
インバータは電圧も
同じ比率で下げる
V/F制御で駆動しています。
(V/F制御については
以下のサイトを参考ください。
→VVVFとV/F制御とは)
この例のように
電気機器を便利に使いたい
時、磁気飽和が障害に
なるなら
制御回路を工夫して
防ぐ例もあります。
このページでも書いている通り
磁気飽和はモーターにも関わります。
このサイトでは、
初心者のためのモーターの基礎講座も
ありますのでご参考ください。
また
当方では、三相誘導電動機が
関わる機械設備の故障対処法に
関する教材も扱っております。
興味があれば、以下のボタンをクリックして
内容を確認してください。
【保全マンの14時間で分かる
機械設備モーター部の電気故障対処法とは】
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