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サーマルリレーとは何か理解できる11項目で解説

三相モーターなどの負荷は、自身の劣化や
使用環境の変化などが原因で過負荷状態
となり過電流が原因で焼損故障することが
あります。

焼損故障すると、機械/設備は使用できなく
なりますし、その三相モーターも修理をしなければ
いけません。

結果、時間と費用を無駄にすることになります。

こういったことを防ぐ目的でサーマルリレーは
使用されます。

このサイトではサーマルリレーについて
以下の目次のように7項目に分けて解説していきます。

*三相モーターについては以下のサイトを
 参照ください。

三相誘導電動機(三相モーター)とは?

 

 

1.サーマルリレーとは

色々なサーマルリレー

上写真がサーマルリレーです。

サーマルリレー(Thermal Relay)は
熱動継電器とも言われます。

サーマルリレーの役割は、三相モーター
などの負荷を焼損から守る(保護する)ことです。

負荷には三相モーター以外にも
いろいろな負荷がありますが
サーマルリレーは三相モーターの保護に
使われているのをよく見ます。

ですので、このサイトでは
負荷=三相モーターとして
書くことにします。

三相モーターには定格電流という、
それ以上電流値を流し続けると
固定子コイルの焼損故障に
至る電流値が規定されています。

サーマルリレーは、その定格電流が
流れ続けると三相モーターの動作を
停止させるために使います。

停止すれば、当然 電流値は0になりますので
コイルが焼損することはなくなるわけです。

下写真は、
焼損した固定子コイルです。

モーターのコイル焼損の比較写真

熱で焼けて
ボロボロになっています。

このようになったら
この三相モーターは使えません。

*三相モーターの焼損について
よくわからない場合は以下のサイトを
参照ください。

モーター基本講座:モーター(三相誘導電動機)の故障対処について

2.サーマルリレーの使い方

サーマルリレーを使う上でよくある
勘違いが、サーマルリレーと
三相モーターを接続するだけで焼損から
保護できると考えているところです。

ただ接続するだけでは保護はできません。

サーマルリレーにa接点、b接点とあり
その接点を三相モーターを入切する電磁接触器の
コイルへの電路へ入れる必要があります。

*a接点、b接点について分からない場合は
以下のサイトを参照にしてください。

シーケンス回路設計の基本とは

サーマルリレーは三相モーターに過電流が
流れると作動します。

後述しますが、この接点は
サーマルリレーが作動することで動作します。

b接点を電磁接触器のコイルの
電路へ入れておくことで三相モーターを
停止させることができるわけです。

このあたりのことはシーケンス制御、
シーケンス回路に関する知見が必要に
なってきます。
初心者の場合は以下のサイトを参考に
してください。

シーケンス制御とは

シーケンス制御講座

3.サーマルリレー設定方法 整定電流とは

サーマルリレーの調整ツマミ

この写真のように サーマルリレーには
調整ツマミがあります。

この調整ツマミでサーマルリレーが作動する
電流値を設定します。

写真のサーマルリレーの調整ツマミは
0.55A~0.85Aと印字してあります。

これは、この電流値の範囲内で設定できると
いうことになります。

この電流値の範囲外の電流値を設定したい
場合は別の型名を選定します。

写真のサーマルリレーは
12A~18Aまでを設定できる型になります。

この電流値とサーマルリレーが作動する
関係性は、JIS C 8325では

(1)
整定電流の600%の電流を通じ、2~30秒で
動作すること。
(2)
整定電流を通じ、温度が一定となった後、
整定電流の200%の電流を通じ
4分以内に動作すること
(3)
整定電流を通じても動作せず、温度が一定と
なった後、整定電流の125%の電流を通じて
2時間以内に動作すること。

と定められています。

簡単に調整ツマミで設定した電流値は
サーマルリレーが作動する基準となる
値と考えればいいと思います。

三相モーターの場合は、その定格電流を
設定しています。

4.仕組みと動作原理について

電磁リレーは電気で作動しますが
サーマルリレーは熱で作動します。

サーマルリレーとイラスト

このイラストはサーマルリレーの内部を
簡易的に書いたものです。

イラストのA,Bの部分は実物写真のA,Bに
あたります。

A.Bはヒーター線の両端になり、それぞれに
電源と三相モーターを接続します。

 

サーマルリレー内部写真

サーマルリレーは、このイラストのように
ヒーター線を通じて
三相モーターへ電流が流れ

ヒーター線が熱せられ、
ヒーター線で巻いたバイメタルへ
伝導しわん曲します。

そのわん曲が一定以上になると、
それに連動して接点が動作する
機械的構造になっています。

バイメタルは熱いほど曲がるので
過電流が流れて高熱になったら
接点が動作するというわけです。

これがサーマルリレーの仕組み、
動作原理になります。

5.トリップとリセット方法

サーマルリレーが作動することを
トリップといいます。
(サーマルトリップと呼ぶことも
あります)

トリップすると、
三相モーターは動作できません。

再び動作させるためには
トリップを解除する必要があります。

サーマルリレーは一旦トリップ(作動)したら、
自動的に元の状態に復帰するタイプと
手動で復帰させるタイプがあります。

手動で復帰させるタイプは
写真のようなリセット棒を押すことで
復帰させることができます。

自動で復帰するタイプは、水中など
手が届かない場所に設置される時に
使われることが多いです。

一般的な制御盤内に設置される
サーマルリレーでは手動復帰させるタイプ
が使われています。

(制御盤については⇒
 制御盤とは何か)

6.選定と種類

サーマルリレーの選定や種類に
ついて説明します。

整定電流から選ぶ

サーマルリレーの選定ですが
最も重要なことは保護したい負荷に
あった整定電流の型名を選ぶことです。

5.2A~8Aや18A~26A、
34A~50Aなど設定できる電流の範囲が
書かれているのでモーターの定格電流が
その範囲内の型を選定します。

種類

サーマルリレーには、
標準形、速動形、遅動形があります。

この違いは、サーマルリレーが作動する
までの時間です。
速動形は早く遅動形は遅いです。

標準モーターではなく、特殊なモーターが
負荷の場合、標準形では適用できない
(誤動作の原因になる)ため
このような形も準備されています。

あと保護リレーとしては
1Eリレー,2Eリレー,3Eリレーとあり

1Eリレーは過負荷保護
2Eリレーは過負荷保護と欠相保護
3Eリレーは過負荷保護と欠相保護と
逆相保護をします。

ここまで説明したきた保護リレーは
1Eリレーになります。

特別な用途でない限りは
標準形・1Eのリレーを選定すればいいです。

7.配線方法について

サーマルリレーの配線をするには
電磁接触器の配線方法も知っておく
必要があります。

以下のサイトで電磁接触器とサーマルリレー
の配線方法をあわせて説明していますので
ご参考ください。

図と写真で解説!電磁接触器、開閉器の配線方法

8.電気図記号

サーマルリレーのヒーターの電気図記号

サーマルリレーのヒーターの電気図記号

上画像がサーマルリレーの
ヒーター線(素子)の
電気図記号(シンボル)です。

前項で書いたように
サーマルリレーは電磁接触器と
セットで電磁開閉器として
使われることが多いです。

そして、三相モーターの
保護のために使われます

電気回路図の中では
下図のように電磁接触器の主接点と
三相モーターと接続されています。

電気回路図内のサーマルリレー

電気回路図内のサーマルリレー

サーマルリレーの接点の
電気図記号は下図になります。

サーマルリレーの接点の電気図記号

サーマルリレーの接点の電気図記号

2項で書いたように
b接点は電磁接触器のコイルの
電路に接続します。

電気回路図内で探す場合は
三相モーターを駆動する電磁接触器の
コイルの電路を見ましょう。

9.メーカー

サーマルリレーのメーカーは
多くあります。

よく使う、目にするメーカーは
富士電機三菱電機です。

このサイトの別ページ
「図と写真で解説!電磁接触器、開閉器の配線方法」
でも説明していますが
サーマルリレーは電磁接触器とセットにして
電磁開閉器として使用されることが
多いです。

サーマルリレーと電磁接触器が
別のメーカーが使わていることは
ほぼありません。

その理由から
よく使われる電磁接触器のメーカーの
サーマルリレーがよく使われることに
なります。

10.故障について

サーマルリレーはヒーター線が
断線する故障が発生することは
あります。

補助接点の故障もしますが
経験上、頻度は多くありません。

11.最後に

三相モーターの故障原因として
コイルの焼損は非常に多いです。

ですので、それを防ぐサーマルリレーは
非常によく使われる電気制御機器です。

機械/設備の電気制御系の世界で仕事を
するなら外せない重要機器です。

ですので、知識だけではなく配線接続も
できるようになってくださいね。

サーマルリレーと同じ働きを
するものとして電子サーマルがあります。

インバータに内蔵されています。

興味があれば以下のページで
解説していますのでご参考ください。

電子サーマルとは

実務で、サーマルリレーを扱うのは
有接点シーケンス制御(リレーシーケンス)の
分野だと考えています。

(リレーシーケンスについては以下をクリックしてください↓
 リレーシーケンスとは何かを速習したい初心者のためのサイト)

当方では
その電気回路や故障対応ノウハウなども
詰め込んだ学習教材も扱っています。

手前味噌ですが初心者の方には
好評をいただいております。

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このブログサイトでも紹介していますが
(⇒初心者のためのシーケンス制御入門)

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4 件のコメント

  • サーマルの整定電流の125%の電流を通じて2時間以内に動作とありますが、30A以下の配線用遮断器は125%を通じた場合60分以内に動作することとなっています。
    辻褄が合わないのではと思われます。

  • サーマルが動作してブザーが鳴って動作状態(ボタンがでる)でしたが、自然復帰したのでしゅか
    CT400/5Aでサーマルは3.4Aに設定してありました。

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